10年後、電気工事の主役は「配線」だけじゃない

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――電化とデジタルが仕事を雪だるま式に増やす


私たちの暮らしは、見えないところでどんどん電気へ置き換わり、同時にデータで賢く動く方向へ進んでいます。

エンジン車はモーター車へ、ガス機器は高効率の電気機器へ、建物は太陽光や蓄電池を入れて自分で考えて動く――。

この流れは一度動き出すと止まりません。結果として、末端の現場で「つなぐ・測る・制御する」仕事が爆発的に増えるのです。


電気工事の景色が変わる、5つの大波

1. 充電インフラは「水道の蛇口」と同じ存在になる

車が電動化すると、どこでも充電できないと暮らしが回りません。

特に増えるのは集合住宅や商業施設の普通充電。台数が増えるほど、


一度に使いすぎないようにピークを自動で抑える制御


利用者ごとに正確に課金するクラウド連携


将来、クルマの電気を建物に戻すV2H/V2G

まで求められます。

つまり、ブレーカとケーブルだけでは終わらず、通信と制御が必ずセットになります。


2. 「屋根上太陽光+蓄電池」は標準装備に

電気代の高止まりと省エネ義務化で、自家消費型の太陽光と蓄電池は当たり前になります。

ここで価値が出るのは、


系統連系・逆潮流の設計


直流配線の安全(感電・アーク対策)


消防・換気・遮断の計画


発電・消費・売電を最適に切り替えるエネルギー管理

まで一気通貫で仕上げられること。

「載せました、配線しました」で終わらず、“運転して得を出す”ところまで面倒を見る会社が選ばれます。


3. 建物は“省エネを証拠で示す”時代へ

新築は省エネ基準が義務化され、2030年ごろにはZEH/ZEB水準(とても省エネ)を狙う建物が主流になります。

図面だけでなく、実際に動かして、データで達成を証明(コミッショニング)することが重要に。

照明・空調・給湯・換気・太陽光・蓄電池・EV充電をBEMSでまとめ、

「この建物は、予定どおりエネルギーを〇%削減できています」と実測レポートで示す――ここが新しい稼ぎどころです。


4. スマートメーターが“電気のインターネット”を作る

日本は家庭や事業所にスマートメーターが広く行き渡りました。

これが土台になり、


需要が高いときに少し我慢して報酬を得るデマンドレスポンス(DR)


多数の蓄電池やEVを束ねて発電所のように扱うVPP(仮想発電所)

が広がります。

現場では、計測点の追加、遠隔制御盤、通信の二重化、サイバーセキュリティなど、配線とITが融合した仕事が増えます。


5. インフラ更新と系統強化は粘り強く続く

再エネが増えるほど、受変電設備や系統の更新が必要です。

高圧・特高の保護協調、系統増強、監視通信――大口需要家側の改修需要は長く続く見通しです。


10年で主役になる工事ジャンル ベスト7

集合住宅・商業の普通充電×ピーク制御×課金クラウド


屋根上太陽光+蓄電池の自家消費パッケージ(連系・安全・監視まで)


BEMS導入と計測点増設、DR/VPP対応の遠隔制御盤


省エネ改修(照明・空調・インバータ最適化)+実測レポート納品


蓄電池の安全設計工事(直流・アーク・換気・消火・遮断)


受変電設備更新と系統接続の高圧・特高案件


高速道路などの高出力急速充電の更新・kWh課金対応


“配線ができる”だけでは足りない――これからの必須能力

法令・基準を読み解き、要件を満たす図面に落とす力

省エネ義務化、ZEH/ZEB水準、系統連系、消防・保安、充電規格――

「安全・省エネ・補助金」を一撃で満たす設計が指名を生みます。


通信とクラウドにつなぐ力

充電器、蓄電池、太陽光、メーター、センサーをIPネットワークで安全に接続。

証明書、VPN、ログ、遠隔保守まで設計段階から仕様化し、提案書に“セキュリティ要件”を明記して価値を守る。


“実測で証明する”力(コミッショニング)

施工後にデータで成果を示す。

「ピークは○kWまで抑制」「年間一次エネルギーは計画比△%達成」――

この証拠づくりが、追加受注と紹介を連れてきます。