受変電設備の年次点検と更新判断
— 停電と基本料金を一度に減らす現実解
はじめに:点検は“コスト”ではなく“停止の保険”
店舗・工場のキュービクル(受変電設備)は、人でいえば心臓部です。ここが止まると、売上も信用も一気に失われます。年次点検は法律で求められる“義務”ですが、視点を変えると**「突然の停電リスクを下げ、基本料金まで下げるチャンス」**でもあります。
年次点検は必須。 月次(または隔月)点検+年1回の年次点検で劣化を早期に発見する。
更新判断は“3つの数値”で決める。 〈絶縁〉〈温度〉〈力率〉。どれかが赤信号なら、改修か更新を検討。
更新は“容量最適化+力率改善”を同時に。 基本料金(固定費)が下がりやすく、投資回収が早まる。
まず確認:点検で見るのはここ
月次点検(毎月〜隔月)
外観(油漏れ・錆・変形)、異音・異臭
漏電・負荷電流・電圧、ブレーカ温度
発電機の始動停止テスト
年次点検(年1回)
絶縁抵抗・耐圧などの精密試験
高圧ブレーカ・保護継電器の動作確認
配線の健全性確認、事故時に系統切り離し可能か
ポイント:年次は敷地全停電で実施するのが基本。 夜間・休業日に計画し、仮設受電や短時間停電で段取りを組むと営業影響を抑えられます。
更新するか、改修で延命するか — 判定の順番
絶縁が基準を下回った/油漏れ・焼損跡がある → 安全優先で更新寄り。
温度・異音・トリップ履歴 → 接点劣化や容量不足のサイン。主要機器交換+清掃・締め付けで延命できる場合あり。
力率(PF)が85%を下回る → 基本料金が割増。コンデンサ増設や制御見直しで費用対効果が高い。
容量過不足 → 昔より負荷が増えた/減った。トランス容量の最適化で無駄な固定費や過負荷リスクを解消。
盤更新のほか、配線改修・仮設受電・夜間工事などで総費用は上下します。
中古流用は初期費を抑えられる反面、劣化・規格適合・保証に留意が必要。新品との差額と残寿命を必ず比較。
例:力率を90%→100%にするといくら得?
高圧契約では、一般に力率85%を基準に、1%上回るごとに1%割引、下回るごとに1%割増が適用されます。
契約電力:200kW/基本料金単価:仮に1,989円/kW
力率90%:係数0.95 → 年間基本料金 ≒ 1,989×200×0.95×12 = 4,534,920円
力率100%:係数0.85 → 年間基本料金 ≒ 1,989×200×0.85×12 = 4,057,560円
差額:年間 約47.7万円の固定費削減
※単価は地域で異なります。明細票の契約電力(またはデマンド値)と力率、単価を使って実数で再計算します。
目安:力率改善コンデンサの増設・更新は、1〜3年で回収できる事例が多いです。高調波環境では適用条件に注意し、無効電力制御(APFC)やリアクトル付きで設計します。
主任技術者との相談しながらより良い選択と 大規模停電を避けられるように早めの更新を
お勧めします。